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■ 囚人のジレンマな携帯電話業界
2008.03.09 このエントリーを含むはてなブックマーク 

ドコモやKDDIにとってソフトバンクの値引き攻勢には頭が痛いのでは?
携帯電話業界に料金競争の嵐が吹き荒れている。昨年初から値下げを仕掛けてきたソフトバンクは、契約者獲得でトップ。対抗してKDDIとNTTドコモも、ソフトバンクと同様に家族間通話24時間無料の割引策を打ち出した。利用者にとっては歓迎すべき動きだが、携帯各社の収益力は弱まり、端末やサービスの品質低下を招く恐れもある。大手3社のこの1年の株価は3割近く下落しており、過熱する消耗戦に投資家も厳しい目を向けている。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/m20080228007.html より引用
 
この携帯電話業界ほど経済学でいう『囚人のジレンマ』的状況としてシックリくるのもないと思います。

経済学で、複数の主体の行動が相互に影響を及ぼしあう状況の中で、ある主体の利益が、必ずしも他の主体の損失にならないことを非ゼロサム的状況といいますが、そうした状況を説明する代表例として『囚人のジレンマ』というものがあります。
囚人のジレンマについてはWikipediaに解説がなされていますのでそちらを読むと分りやすいです。
本来経済学が想定していたのは、各主体がそれぞれ合理的な行動を行い、その結果社会全体として最適な状態になるということですが(これをアダム・スミスは『神の見えざる手』と言ってます)、実際の社会を振り返ってみるとそうはなっていません。各主体が『最適』な行動を選択したつもりでも、全体では『最適でない』状況になったりします。そういう状況を説明する題材として携帯電話業界はもってこい?

[ドコモとソフトバンクの経営戦略]
ドコモ↓\ソフトバンク→ 値下げせず 値下げをする
値下げせず (1000、1000) (500、1200)
値下げをする (1200、500) (700、700)

・貴方はドコモの経営者でライバルはソフトバンク社1社だと仮定。(携帯業者はこの2社のみ)
・経営戦略上取りうる手法が2つあって、一つは値下げをせず、現在の料金体系を維持すること。その場合、ソフトバンクも値下げしなければドコモの利益は1000となる。ただしソフトバンクが値下げをすればドコモの利益は500となる。
・もう一つの戦略は、値下げを行う戦略をとるケース。この場合、ソフトバンクが値下げしなければドコモの利益は1200となるが、追随してきた場合の利益は700となる。

※()の左側がドコモの利益、右側がソフトバンクの利益を表す。例えば(1200、500)の場合、ドコモの利益が1200、ソフトバンクの利益が500である事を意味する。

さて、どの戦略を選択するのが合理的でしょうか?
2社ともに値下げ競争を行うことで利益が700になってしまうよりも、両社共に値下げを行わず、1000の利益を得るほうがどう考えても得ですね。ですが面白いことに、経済的合理性をお互いに追求する限り、ドコモもソフトバンクも『値下げ』を選んでしまうのです。

〜貴方の頭の中〜
ソフトバンクが「値下げせず」を選んだ場合を想定
・・・このケースだと、もし自社 (=ドコモ) がソフトバンクと同じように値下げを行わなければ利益は1000だが、逆に自社が値下げをすれば利益は1200になる。だから値下げをしたほうが得だな。
ソフトバンクが「値下げをする」を選んだ場合を想定
・・・このケースだと、もし自社が値下げをしなければ自社の利益は500だが、逆に自社が値下げをすれば利益700は確保できる。だから値下げをしたほうが得だな。

ソフトバンクがどの戦略を取ろうが、わが社は『値下げをする』戦略をとるのがベスト!

そして、これはソフトバンク側からみても同じ条件ですので、両社の結論は『値下げをする』で一致します。ドコモ、ソフトバンクは互いに値下げをせず、価格を据え置いたほうが得であるにもかかわらず、互いに値下げ競争を行った結果、利益は700しか得られない。合理的な各主体が自社にとって「最適な選択」(値下げをする)をすることと、全体として「最適な選択」(値下げをせず価格据え置き)をすることが同時に達成できないことが分りますね。つまり『神の見えざる手』の力が及ばなかったことになります。

このような『囚人のジレンマ』的な状況は企業経営に限らず社会のいろいろな場面で散見される問題です。冷戦期の米ソの核兵器開発競争はまさに代表的なケース。お互いに核兵器の開発を止めれば、社会的・財政的な負担解消や世界平和のために資することは頭では分っているけど、相手の出方が分らないから止められず、いつまでも開発競争を続けました。これは余談ですが。

契約者数からみてもこの先急成長が見込めない携帯電話業界にあって、ソフトバンク社の存在はドコモやKDDIにとって迷惑な存在だと思います。ソフトバンクがJ‐フォンを買収する際に必要だった莫大な借入れ資金を調達する際の条件として金融機関から突きつけられたのが『契約者条項』です。これは同社のプレスリリースにて『財務上の目標値には、累積負債削減額やEBITDAが含まれ、事業上の目標値には契約者数が含まれる。』ということが明らかにされています。
参考:ソフトバンク社プレスリリース
ソフトバンク社が契約者獲得に必死になるのはこの条項の存在もあるため、厳密には『囚人のジレンマ』のケースとして適切でない部分もありますが、業界の3社が共に値下げに追随し、その結果全社の利益が圧迫されているということだけは間違いないです。まさに経営陣はジレンマを感じているんじゃないでしょうか?


【関連エントリー】
- 携帯電話各社 仁義無き戦い
- 何か気になる企業HPの構成
- ソフトバンクに求めるもの
- 企業買収融資が過去最高に
- 1Q決算分析〜携帯キャリア3社




コメント

興味深い記事です

こんばんは−☆
囚人のジレンマ、久しぶりに思い出しました。学生時代に買わされた経済の教科書なんかをまた読みたくなってきました♪
値下げすべきか、価格を据え置くべきか、まさに経営者にとってジレンマですね。

2008.03.09 Sun 21:31 | URL | とんぽり[ 編集 ]

相互リンクのお願い

はじめまして、K氏です。

普段は100円以下に特化した超低位株サイト「100円以下超低位株研究所」

http://teiikabu.is-mine.net/

を運営しております。

当サイトのhttp://teiikabu.is-mine.net/link2.html
にリンクを貼らさせていただきましたのでぜひとも相互リンクをしていただけないでしょうか?

何卒、よろしくお願いいたします。

2008.03.09 Sun 22:21 | URL | K氏[ 編集 ]

>とんぽりさん

携帯業界の先行きとして暗いですね。この業界の致命的な経営上の問題点として、各携帯キャリアが有する価値が、その会社に固有のものとして一般に認知されていないところです。つまり、価格くらいしか競争上の優位さをアピールできないところが問題。
そうした業界においてソフトバンクのような価格破壊を行う会社が1社でも現れてしまえば、行くとこまでいってしまうしかありません。(囚人のジレンマをこれから何度も繰り返すことになるのでは?)
技術力があるにも関わらず世界的展開に失敗したことが今更ながら経営陣は悔やんでいるのではないでしょうか。

2008.03.09 Sun 23:29 | URL | ぐっち[ 編集 ]

>K氏さん

これまでは基本的にどのようなサイト様であっても基本的にリンクの申し出をお受けしてきたのですが、これからは私がよく訪問するサイトやスタンスが近いサイトのみリンクを受け付けるようにします。
ですので、申しわけありませんが今回はお断りさせていただきます。

2008.03.09 Sun 23:47 | URL | ぐっち[ 編集 ]

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